毒ガス
毒ガスは英仏独墺が広範囲に使用した。ロシアとトルコの使用は比較的少量である。毒ガスは致死性ガスと刺激性ガスに分かれる。更に致死性ガスは即死性のものと遅効性のものに分かれる。即効性かつ致死性ガスは青酸ガスが代表的であるが、活性化ガス(空中で水と反応してしまう。)で効力が安定しない。フランス軍が少量使用したのみだ。
致死性ガスで遅効性のものはホスゲンガスが有名となった。ホスゲンとはカルボニル塩素で一酸化ガスと塩素を150度の高熱で反応させることで得られる。1915年ドイツとフランスでほぼ同時に使用された。即座には呼吸性障害があるだけだが、遅効性で48時間以降に突然死亡することがある。通常は弾頭に装填し発射する。摂氏5度で揮発し拡散する性質がある。常温では枯葉の臭いがするという。
刺激性ガスは、呼吸障害性・催涙性・催クシャミ性・糜爛性(皮膚に付着して炎症を起こす)とに分かれる。即死することはないが反面後遺症があることが多い。催涙性催クシャミ性ガスは、ガスマスクの装着を耐えがたくするもので、はずした時、別のガスで致命傷を負わせるという発想にたっている。
毒ガスは効果はあるが極めて使用が難しい武器である。ほとんどのガスが気象条件に左右された。ガスの種類により拡散の度合いが違い当然風の影響は免れない。風に抵抗がある有名なものはマスタードガスである。マスタードガスは比重がやや空気より重く地表に数日停滞するという特色があった。
マスタードガスは硫化ジクロロ酸エチルのことでドイツ軍により1917年から使用された。致死性ガスに区分されていないが、大量に吸入したときは硫化水素中毒と同じ症状を呈し死に至る。糜爛性で皮膚に付着するとたとえ着物を通していても水疱を生じることがある。また一時的ではあるが盲目となるケースがある。黄十字またはイーパライテ・イペリット(イープル戦で多用された。)とあだ名された。
最も多用されたのは塩素系ガスで致死性とはされてないが、少量でも呼吸困難で死亡することがある。単純な塩素ガスは水と反応し無害化するが、後半にはより強力なタイプが現れた。原理は塩素ガスであるが空中で拡散させる手段として各種揮発剤と混合された。
またクロロピクリンや揮発性を強めるためクロロフォルムとの混合物、三塩化砒素、などと混合使用され、めまい・幻惑・急性の痛みなどの症状を起こした。ただし塩素系は水と反応し、ホスゲンは空気と酸化するからガスマスクが有効で、大戦後期に新型ガスがとくにドイツで使用されたが決定的とはいえない。ただしドイツは次から次へと新型ガスを出すものの西部戦線で使用総量は英仏の方が僅かに多い。
1918年3月、カイザー戦でドイツ軍はジフェニール砒化塩素を使用した。この時は長距離砲の80%の砲弾はこのガス弾だった。この物質はガスではなく爆発とともに飛まつとなって拡散し、催クシャミ性をもちガスマスクが無効だった。吐き気や頭痛を伴い戦闘意欲を喪失させたという。ただ唯一後遺症を残さない。このガスは青十字とあだ名された。このあと改良版のジフェニール砒化水素も出すが、戦争はすでにドイツの敗色が濃くなっていた。
ガス中毒と診断を受けた兵士のうちそれが原因で死亡したのは3%といわれる。西部戦線で毒ガスで死亡した兵士は2万人に満たないと推定され巷間言われる程殺傷力のあるものではない。
しかし後半とくに塩素系ガス・マスタードガスを浴びた兵士は一生または5年以上にわたり後遺症に苦しんだ。それにしてもイープル近隣のコミネでマスタードガス(イギリス軍使用)を1918年10月に浴びたヒトラーにはなぜ後遺症がなかったのだろうか。『わが闘争』では黄十字にやられたと、はっきり書いているが。

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カイザー戦
ブルフミューラーの砲術