ベルサイユ条約賠償条項

第8章(賠償条項:Reparations)

231条から247条

第1項(231−244)一般措置
第2項(245−247)特別措置

231
ドイツとその同盟国による侵略によってひき起こされた戦争の結果生じた連合国、その国民にたいする損害と被害にたいして、ドイツとその同盟国に責任があることを、連合国はそれを認識しドイツはそれを了解する。
232

連合国は現在ある条約をドイツが履行する結果生じる恒久的な賠償資源の枯渇を考慮してドイツの資源は不足していると認識せざるを得ない。

しかしながら陸海空におけるドイツの侵略行為によるドイツと連合国との戦闘により惹起された連合国民間人の財産と身体の損害についてドイツが補償すべきことを、連合国は必要であると認め、ドイツは補償をなすことを約束する。

ベルギーの復旧について、1839年の条約に背馳した結果でありこの条約の他の項目に付け加えドイツはすでにドイツが誓約していることに従い、ドイツは1918年11月11日までにベルギーが連合国からの借り入れた金員、およびそれの5%の金利を支払う義務を負う。この金額は賠償委員会で決定される。そしてドイツ政府は1926年5月1日付けまたはドイツ政府の選好するところにより1926年のいずれかの5月1日付けで支払い可能の負債証券を発行することを約束する。

追って賠償委員会により負債証券がどのような形式をとるか決定される。証券は賠償委員会に手渡され、ベルギー政府に代わって受け取りとその認定の権限をもつ。

233

ドイツによってなされた損害の金額は賠償委員会(予備)によって決定され、賠償委員会と呼ばれる。そして構成と権限については本条約文書と2から7までの付属文書により定められる。

賠償委員会は請求内容を決めるとともにドイツ政府に弁明の機会を与えるものとする。

前述により定義された損害について賠償委員会による調査結果についてはドイツ政府にその結論を1921年5月1日またはそれ以前に通知するものとする。そしてそれは政府の義務に係わるものを表現している。

賠償委員会は1921年5月1日から始まる30年間の支払い義務の金額と方法について草案を固める。しかしながら前述の期間内にドイツ政府が支払いを終了しないとき、残余の金額については賠償委員会に一任されたとみなし支払いを猶予することがある。またはこの条約のこの章で決められた手続きにもとづき連合国が決定する方法による。

234
賠償委員会は1921年5月1日以降も、時宜に応じてドイツの支払い能力および支払い資源について考慮する。そして公聴の機会を与えたのちに支払い方法と金額について一任されたものとする。ただしそれは233条の範囲内に限られる。しかしながら賠償委員会を代表する国々の特別の許可がある場合を除き、この条約のいかなる部分も改変することはできない。
235
連合国が産業基盤や経済基盤を速やかに復旧させるため、その支払いを一括で受けることは保留しながらも、ドイツは1919年、1920年、1921年の4ヶ月分として200億金マルクを支払うものとする。賠償委員会はその支払い物資(金、船舶、有価証券、その他)や方法を決定する。この金額のうち1918年11月11日の休戦日以降の占領に係わる軍隊の費用は早急に支払われる必要がある。そして連合国はドイツが賠償を支払うために基本的に必要と認められた食料や物資を提供するものとし、その対価もそのうちから支払われる。賠償のための支払い高については1つづつ計算されるものとする。ドイツは付属文書12(C)で定められた金額について負債証券を発行する。
236
ドイツは付属文書3、4、5、6に従って経済的資源を賠償として引き渡すことに同意する。それはおのおの商業船舶、物理的資材、石炭とその誘導品、染料及び化成品に関連する。これらの付属文書によるサービスや財産の移転についてはそこに記載されている方法で評価を受けるものとし、前述の条項による賠償支払い義務の履行に充当される。
237

ドイツによって支払われた物資・金員などについて、連合国は平等・互恵の基準にもとづいて相互に前もって決められた比率に従って分配されるものとする。

この分配のため243条および付属文書3,4,5,6,7で引き渡された物資の評価については、おのおのの年の現金分与と同じ方法により一つづつ計算される。

238

前述の賠償の他にドイツは賠償委員会の定める手続きに従って、持ち去ったまたは強奪したまたは没収した現金を返却せねばならない。そしてまたドイツまたはその同盟国の領内で発見された、持ち去られた有価証券、有体物、家畜を返却せねばならない。

賠償委員会により手続きが定められる以前においても1918年11月11日の休戦協定の条項、延長条項、現場での取り決めにより返却は進められる。

239
ドイツ政府は238条で定められた返却を実施することを確約する。そして233条、234条、235条そして236条で定められた支払いと引渡しを実行することを確約する。
240

ドイツ政府は233条で定められた賠償委員会を付属文書2によって設立が決定されたものと同一のものと認める。そして本条約により与えられた賠償委員会の権限による執行と保有について、取り消し不能の条件で同意する。

ドイツ政府は賠償委員会の活動に必要な財政状況、財政政策実施状況、国富、生産能力、原材料の生産在庫状況、ドイツとドイツ国民の生産性指標に関連する情報を賠償委員会に提供する。更に賠償委員会の判断に従って付属文書1で定義された賠償支払い能力の評価のために必要な軍事作戦に関連するいかなる情報も提供する。

ドイツ政府は賠償委員会の委員及びその公式に認められた代理人にたいし友好国の外交官に与えられる待遇と同一の権利と免責特権を与えるものとする。

更にドイツは賠償委員会委員と雇員の給与と費用を負担する。

241
ドイツはこれらの措置を実行に移すために必要な法令、条例、命令を通過・批准・施行せねばならない。
242
本条約のこの章の措置は第10章(経済条項)の第3、第4項で言及されたドイツの財産や権利には及ばない。また243条(a)のドイツに資産となる場合の残高について、その財産などを売却した対価にも及ばない。
243

次のものはドイツの賠償支払いの観点からはドイツの資産として計算される。

(a)第3章(ヨーロッパ政治条項)の第4項(アルザス・ロレーヌ)、第10章(経済条項)の第3項、第4項におけるドイツの差し引き資産

(b)第3章(ヨーロッパ政治条項)の第4項(ザール盆地)、第9章(金融条項)および第12章(港湾・水路・鉄道)における移転の結果生じるドイツに帰せられる資産

(c)賠償委員会が判断する本条約に基づく財産・権利等の移転科目でドイツに帰することができる資産

ただし本条約本章238条に基づいて復旧された資産は対象とならない。

244
本条約により特別に指定されていないドイツの海底電線の移転については付属文書7で規定される
245
本条約が発効して6ヶ月以内にドイツ政府は1870年から1871年の戦争の間にドイツ官憲によりフランスから持ち去られた勲牌、文書、歴史的事物、芸術品を返還せねばならない。そしてフランス政府が通知するリストにもとづき、この戦争についても同様とする。そして1870年から1871年の戦争における軍旗および、内相ルエールが所持していたブルノイ(セーヌ・オアーズ間)近郊のセルサイ城で1870年10月10日に奪われた政治文書を返還せねばならない。
246

本条約が発効して6ヶ月以内に、トルコ官憲によってメジナから持ち去られ、廃帝ウィルヘルム二世に献上されたとされるカリフ・オスマンのコーラン原本をヘジャズ国王陛下に返還せねばならない。

同様の期間にドイツ領東アフリカから持ち去られ本国に持ち込まれたスルタン・ムクワワの髑髏を英国政府に返還せねばならない。

前述の文物の引渡しは返還されるべき政府の指定する時、場所で行われ完了する。

247

ドイツは賠償委員会の関与のもと、要求3ヶ月以内に写本、印行本、印刷本、地図、収集物をドイツのルーバン図書館の焼き討ちによる損害に見合ってルーバン大学に引き渡すことを約束する。これの等価の詳細計算は賠償委員会により決定される。

ドイツは本条約が発効して6ヶ月以内に二つの偉大な美術品の復旧のため次のものを引き渡す。

(1)以前ゲントのセント・バーボン教会にあり現在ベルリン博物館にある、バンダイク兄弟により描かれた神秘の小羊の3幅対の断片

(2)以前ルーバンのセントピーター教会にあり現在二つがベルリン博物館にあり二つがミュンヘン美術館にあるディートリッヒ・バウツによって描かれた最後の晩餐の3幅対の断片

連合国とはThe Allied and Associated Powersであり、英米仏伊日およびベルギー・ポルトガル・ルーマニアの8ヶ国を指す。


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