ベルサイユ条約戦争責任条項

第7章(戦争責任:Penalties)

227条から230条

227

連合国は国際的道義および諸条約の崇高なる義務に最高度の侵害を犯したことにより前ドイツ皇帝ホーエンツォレルン家のウィルヘルム二世を公式に訴追する。

その被告人を裁くため特別の法廷が設置される。被告人には弁明の保証が与えられる。法廷は次の諸国により指名される5人の裁判官で構成される。;アメリカ、イギリス、フランス、イタリー、日本。

判決に当っては、法廷は国際的公法の崇高な動機により運営されねばならず、国際的道義と国際的取り決めによる義務が斟酌されねばならない。そして審決に見合った処罰が課せられるだろう。

連合国はオランダ政府に裁判に付されるべく前皇帝が引き渡されることを要求する。

228

ドイツ政府は戦時国際法に違反したかどで訴追を受けた人々を軍事法廷に引き出す権利が連合国に存在することを認める。そのような人々は有罪とされたならば法律に従って刑罰が宣告されねばならない。この条項はドイツまたはその同盟国における法廷で裁判に付されたとしても適用が可能である。

ドイツ政府は連合国およびその同盟国から要求があれば法令や習慣を犯した人々を引き渡さなければならない。それらの人々はドイツ政府の下での職業、役職名、地位、階級によって特定されるか名前によって特定される。

229

連合国の国民にたいし刑法上の犯罪をなし有罪とされた人々は当該国民の国の軍事法廷に戻される。

複数の連合国の国民にたいしての犯罪で有罪とされた人々は関係する諸国で構成される軍事法廷に戻される。

すべての場合、被告人は弁護士を指名する権利が与えられる。

230
犯罪行為にたいする十分な情報、犯人の特定、責任の有効な所在を確保するためドイツ政府は必要と考えられる全ての文書、諸情報を提供することを約諾する。

連合国とはThe Allied and Associated Powersであり、英米仏伊日およびベルギー・ポルトガル・ルーマニアの8ヶ国を指す。

227条と228条がいわゆる戦争責任条項と呼ばれるものだが、表題としてはPenaltiesという言葉が用いられている。この言葉は普通数えられない単語であるが、わざわざ複数形を用いたのは特別の意味をもたせることが背景にあったようだ。英米国内向けだが英文の条約でこのような処置を英米人が加えれば後日の紛糾は免れない。また英文自体もアクの強いもので典型的な弁護士作文というべき悪文である。歴史的文書をこのようなことで、格調を落とすのもどうかと思われる。

そしてこの条項は全く履行されることがなかった。つまりオランダ政府はカイザーの引渡しに応ぜず、ドイツ政府も後日犯罪人として指名された人間を引き渡すことがなかった。

これらのことは第二次大戦後の処置と比較して著しく甘いといわざるを得ないだろう。ただ司法が戦勝国で実施されるという点が公正さを欠く感は否めない。これも条約と憲法のどちらが優先されるのかという点に還元される。永遠に解決がつかないだろう。ただ人道に反する罪は条約が優先されねばならない。

ベルサイユ条約賠償条項


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