中国近代化の障害


ニミッツ
人口爆発そして太平天国の乱と続く中国の歴史が、産業革命の基礎をなす郷紳層を破滅させ、中国の近代化を遅らせるのは、わかるのですが、例えば同時代の他のアジア地域と比べてそれほど遅れていたのでしょうか。

別宮
もちろん、日本と比べたら遅れていました。ところが、東南アジアより一人当たりGNPなどの水準では進んでいたといってよいでしょう。

問題はロシアも含めた他の中緯度地域より決定的に遅れ、さらに現在にまで至る過程で更に遅れたことです。例えば、タイと比較して現在の中国は、中国政府の統計を信用しても三分の一程度なんです。

ニミッツ
清末から現在に至る中国の停滞の理由は何でしょうか。

別宮
中国の政治指導者の失敗です。すなわち孫文、蒋介石、毛沢東の失敗です。彼らの政治哲学が誤っていたんです。

ニミッツ
その三人の政治哲学で共通する点はあるのでしょうか。

別宮
国家主義は共通します。ただ、二〇世紀大半の国でこれは発生しており、中国が例外ではないというだけです。

より重要な点は、「自由」と「平等」をこの三人とも否定したことです。この結果、現在中国ではあらゆる自由がありません。国連人権委員会や法務省の人権擁護委員会のいう「人権」とはそもそも、「自由」と「平等」を前提にして、それを基礎に例えば、一日8時間労働とすべきだと論じているんです。

そして「自由」と「平等」とは「All or Nothing」ストーリーであり、身分制度を廃止し、新聞発行を自由化せねばならないんです。これに対し「民主」は程度問題にすぎません。

このような「自由」と「平等」に基礎をおいた政治哲学を啓蒙主義といいますが、中国では育たなかったんです。

ニミッツ
それは経済と直接に結びつくのでしょうか?

別宮
当然です。啓蒙主義のもとでは国家と私有財産は徴税しか結びつきません。つまり、国家は徴税以外の手段で、私有財産を奪ってはいけないんです。そして徴税とは、法律に則る必要があります。税務署員が恣意的に課税したならば、公平な税制は期待できません。これを「租税法定主義」と言いますが、現代中国には全くこの考え方がありません。

すなわち、株式で暴利をあげたなどという理由で、財産が政府に没収されることが、この二一世紀でも起きているんです。

これで、安心して新規事業を興し、営利事業を営むことができるでしょうか?現在でも中国では私有財産は政府により保護されていないんです。